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「いやあ、びっくりでしょ。これ、全部レスター代表とそのお相手を見に来た野次馬だってんだから。ああ、さすがに各々、なんらかの理由をつけてはいるみたいだけど、こんな状態だから事前の選別で三十分も並んだ挙げ句に弾かれる人もいるらしいね。ほんと、迷惑な話だよ。その点、うちもおたくも通りそうだから待つしかないけど」
一人でよく喋る男は、ファウストの持っている書類を見てお仲間だと思ったようだ。
ついでに、相当暇だったのだろう。
後ろを振り向けば、すでに数人が並んでいた。
それでも、前方では、さっきの話通りに弾かれる人も多いらしく、それなりに進んでいく感はある。
城内なのに物見高い人間の多さに驚きつつ、人波に埋もれている自分がちょっと面白くなってきたところで、選別をしている役人と目が合った。
「な、ファウスト王!?」
驚き叫んでくれたおかげで正体がすっかりばれてしまった。
前にいるお喋りな男なんかは、目を見開いたまま青ざめている。
当然、慌てた役人に顔パスで通されるので、前に並ぶ男には 「悪いな」 と言っておいた。
横目でふるふると精一杯首を振って返事にしている仕草に苦笑しながら、いざ、レスターとの対面へと乗り込んでいく。
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