はじめての運転免許証

10/10
前へ
/10ページ
次へ
「すみませーん」 1人の女性が声をかけてくる。 美奈子と2人、その方向に目を向けた。 「沢渡 健司、さん、ですね」 「そうだが」 美奈子と帰ってからのことを考えていた俺は、むすっとした。 彼女はそんな俺に気にせず、微笑んで言い放った。 「人型運転免許証の山根 美咲(やまね・みさき)です。よろしくお願いしますね」 「……えっ?」 「沢渡さんの免許更新にあたり、私が配属することになりました」 ……人型運転免許証?どこかで聞いたような…… あっけにとられる俺に、嫁がニコリと笑って言った。 「私の妹分の美咲ですよー。私ともども、彼女もよろしくですよー」 「健司兄さんについては、美奈ちゃんから聞いて……いいひとだとわかっているから安心です」 2人とも既知の仲なのか、おしゃべりが弾んでいる。 美咲さんも美奈子と違わないほどのプロポーションを持つ。 この女性も俺の好みドストライク。 「えーーーーーーーっ!」 「沢渡さん、美奈ちゃんに飽きたら、私も相手して!」 えっ?でも護身術で吹っ飛ばされるんじゃ……。 「沢渡さんの場合、良い人とわかっているので、私はオールOKですよ」 嫁の妹分はそう言って、魅力的なウインクをしてくる。 一瞬、心を捕まれた気がした。 「健司さーん、いくら美咲が若いからって、浮気は許さないですよー」 「いいじゃないですかー、運転免許証の特性上、私も沢渡さんの好みになってるはずです」 「それでも、ですよー。いいですかー、健司さん。美咲を襲ったら許さないですよー」 2人の若い女性が言い合いをしている。 片方は嫁、もう片方は、新たな同居人……。 ……もう勘弁してくれ。 3人での生活が、これから始まってしまうようだ……。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加