はじめての運転免許証

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「これって、断ることはできる?」 「……えっ!私のこと、嫌いですか……」 一瞬表情が暗くなる。 好みドストライクの女性に、そんな表情はさせたくない。 「い、いや、そういう意味でなくてね……」 「あ、でも、断ると、運転免許返納ということになりますですよー」 「返納というと?」 「はい、返納した場合、10年間運転免許を取得することができなくなりますですよ」 ……それは困るが、今の状況も困るんだが……。 とりあえず、このまま玄関で話し込むのも良くない。 彼女を家の中に招き入れる。 「……ここが私がこれから過ごす家……」 「……いや、まだだから……」 「……なにー?」 「……何でもない……」 俺は反論したくなったのだが、彼女の無邪気な笑顔に毒気を抜かれた。 何度も言うが、彼女の容姿は俺の好みドストライクである。 強く言うことができない。 テーブルを間に対面して座る。 「どういうことか説明してくれないか」 正直、この冊子を読むよりは、目の前の「人型運転免許証」本人に聞いた方が早い。 そう思い、俺は彼女に説明を促す。 「えー、コホン」 彼女は、軽く可愛い咳払いをして、説明を開始した。 「これはー、国の少子化対策なのです」 「大きく出たなぁ」 そう言ったものの、いまいちよくわからない。 「なぜ、少子化対策なんだ?」 「それについては……、3年過ごしたらわかるらしいですよー」 説明を促したが、彼女はよくわからないことを言ってくる。 3年異性と一緒に過ごせば、そりゃあ身体の関係になる、そして……。 そういうことかと、勝手に判断した。 「3年後、免許を更新するまで、私は健司さんと一緒に過ごします」 「過ごすというのは、どんな感じで?」 「普通に免許証を携帯する形ですよー」 「アンタ、人間だろ?携帯できないじゃん」 「そこは、ここにカードがありまして」 彼女は、1枚のカードを出してくる。本来の運転免許証がそこにあった。
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