はじめての運転免許証

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免許証あるの? 「おいおい、アンタいらないだろう、そのカードがあれば」 俺のそんな声に「チッチッチ」と言ってくる。 「わかってないですねー、沢渡さん」 わかってないから、説明を求めてるんだよ。 「アナタは何も考えなくても、好みの女性が手に入るですよー、ユー・シー?」 YOU See?じゃねえよ、しかも自分で「好みの女性」と言いやがる。 確かに、悔しいけど、この女性、好みドストライクだけどさ。 「そこまで言うならさ」 俺は、少し彼女に近づいて、手首をつかんだ。 「挨拶代わりにアンタにいたずらしても、いいよな!」 「きゃっ!」 可愛い悲鳴が響いた。 だが、俺の視界は1回転し、いつの間にか倒れ込んでいた。 「どういうことだ……?」 俺は自分がやろうとした行動を端に置いて、質問していた。 「もー、いきなりなんだからーびっくりしましたですよー」 かわいい笑顔の彼女は、特に動揺していないようだ。 確か、悲鳴を上げていたと思ったのだが……。 「沢渡さん、私たち『運転免許証』は、護身術を嗜んでいるのですよー」 護身術、ね。見た目は華奢なのに、ご苦労なこって。 「私たち、免許証なので、盗られると身分証明になってしまうのですよー」 確かに、免許証は落としたり、盗られたりするとマズいけど……。 彼女を「盗る」って、普通に誘拐事件なんですが、そこはどうなるのだろう。 「なので、身を護る必要があるのですよー」 免許証が自身の身を護る……。 変に納得できる理由だった。 コイツ、人間のはずなのに、コイツだけでも俺の身分の証明ができる……って、どうなんだ。 意味がわからないよ。 わからないけど、そういうものとして納得するしかない。
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