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「さっきのアナタみたいに、むやみに襲ってくる持ち主から身を護るためにも、この護身術は必要ですよー」
こんなかわいくて華奢なのに、護身術で触れることができない。
「そして、私たちが承諾なく手籠めにされた場合、免許取り消し及び、強姦罪となるのですよー」
おいおい、手も出せないのかよ、少子化対策何処行った。
それでいて一緒に住むって……。
男として、欲望を持て余すぞ、これ。
しかも、断りたくても断れない。理不尽だ。
いろいろ大変なのでは……。
「沢渡さん」
「……」
「そんな顔、しないのですよー」
「……」
「沢渡さんは運が悪いって顔、してるけど、私は運がいいかもですよー」
そこまで言って彼女はこう言い放った。
「だって、私、アナタと上手くやっていけそうだから。ねー」
ウインクしてきた。
そんなある冬の日、人型「運転免許証」との生活が始まった。
★★★
「沢渡 健司(さわんど・けんじ)さーん、8番受付までお越しください」
館内放送が流れる。
俺は、8番受付に向かった。少し緊張している。
なぜここまで緊張しているのだろうか。
受付の前にたどり着いた。
「沢渡 健司様ですか?」
「はい」
「この書類に、間違いないでしょうか」
そこには「人型運転免許証解約手続書」と書いてある。
そうだ、俺は人型免許証を解約する。
「はい、間違いないです」
「では、これも確認お願いします」
受付の女性は、小さい紙を取り出し、確認するように促す。
「記載内容に間違いはないでしょうか」
俺は手に取る。
氏名、住所、誕生日、本籍地。間違いはない。
「間違いはないです」
「免許証は後で、お届けいたします」
「……わかりました」
俺の答えを聞いて、彼女は微笑んだ。
「では……、手続きは終わりです、無事に返却手続きが終了しました」
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