一日目

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「もうちょっとしたら朝生も帰ってくるけ、あとテルちゃんとこも」 「あ、そうですか」  朝生というのは夏生の双子の兄、テルちゃんは智生の妹の輝生だ。輝生は高校教師で、夫の君彦は大学で教鞭をとっている。 「みんな来たらちょっと忙しなるけ、ほんに来てもらってすぐでごめんけど、今のうちゆっくりしとって」  永子も智生と同じような事を言う。永子は盆の上にある、冷たい煎茶と海苔のついた煎餅と黄色い薄皮の饅頭と、細かく切った昆布といり豆の混ざったものと、ピーナッツの入ったチョコレートとべったら漬けと高菜漬と軽く飯の盛られた茶碗を座卓の上に乗せた。 『ああ……そういや、ここは……こんな感じだったなぁ……』  以前来た時も同じく、座卓いっぱいに菓子を出された上にお茶漬けを出されたのだ。ついでに机の上に出されるままに食べ過ぎて、豪華な夕食があまり入らなかったことも思い出した。 「夏は冷たい方がええけねぇ」  永子は早速汗をかきはじめているボトルからキンキンに冷やしたお茶を飯にかけた。 「あぁ、すいません」 「なんだい、そんだけしか出しとらんだかい」  部屋に戻ってきた智生の手には羊羹とみたらし団子が三本、カステラに白い皮の田舎饅頭にチョコレートのかかったダイジェスティブビスケットの乗った盆があった。
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