方向不明

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ここまできて気になるのは、見た目だ。 体を起こし、リビングを通って洗面台へ向かう。 「あ、かーちゃんおはよう。なぁ、このメガネ何?」 「はい?なんだいその派手なメガネは」 リビングに居たかーちゃんに聞いてみるが、どうやらサプライズとかではないようだ。 そのままリビングを通り過ぎ、洗面台へ。 鏡を見ると、そこにはいつもと違う自分がいた。 「これ、イケてね?」 またも1人で呟いてしまったが、誰にも聞かれていない。 大学では地味メンの俺。 運動は好きだが得意ではなく、勉強が出来そうな見た目だがそうでもない。 影が薄いわけでもなく、目立つ方でもない。 入学して半年立って先生に覚えてもらえない程度の俺が、メガネ1つ替えただけで明るい印象に見えるようになった。 メガネは体の一部と良く言うが、俺は違うと思う。 メガネをかけている人は、体がメガネの一部なんだ。 俺今うまいこと言った。 「ちょっと隆久!あんた時間平気なの?ご飯は?」 「ん?あ、今日1限からか。食うから置いといて!」 どうでもいい事を考えていると、気付いた時には遅刻するギリギリの時間になっていた。 今ならまだ間に合う。 6分で歯磨きと着替えを終わらせ、その1分後には朝食の食パンをくわえて家を飛び出す。 曲がり角で女の子にぶつかったら、間違いなく怪我をさせる程の速度で学校へ向かい、なんとか遅刻は免れた。
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