方向模索

6/8
前へ
/20ページ
次へ
「晴菜。突然なんだがいいか?」 「ダメだ」 「じゃあいい」 「嘘だよ。なんだ?」 無意味なやりとりを終え、少し溜める。 首を少しかたむけながら、水を口に含んだタイミングを狙って、質問を投げる。 「お前、2限の時の女子、好きだろ」 「ブフッ」 「うわ、きたねっ!」 「ゲホッ、わ、悪い」 予想通り動揺で水を噴出したが、その一部が俺の腕にかかって大騒ぎ。 とりあえずそれを処理した後、好きな人を隠し、更に俺に水を吹きかけた罪人をジト目で見る。 「で、なんだっけ?」 「とぼけんなよ。好きなんだろ、あいつの事」 俺は晴菜の後ろを指差す。 晴菜が振り向くと、そこにはさっきの女の子が、別の子とご飯を食べていた。 晴菜はゆっくりと振り返り、すぐにこちらに向き直る。 その頬は少し赤く染まっていた。 「い、いつから気付いてた?」 「やっぱりかよ。普通気付くだろ。お前案外わかりやすいぞ」 とか偉そうに言ってみたが、たかが2時間前だ。 「い、いやー、何かよく勉強聞きに来るからさ。教えてるうちに…すり込みってやつ?」 「何か違う気がするが」 言いたいことは分かる。 まぁ、実は本題はそこじゃない。 「そこでもう1つ質問だが。もしもだぞ?あの子とお前が両想いだって分かったら、お前告白とかすんの?」 「え…なんだよそれ。意味分かんないけど?」 明らかな動揺をする晴菜。 この後中々口を滑らさない晴菜を無理やり言いくるめる事にした。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加