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「あいついない時に帰ると、家ん中真っ暗なんだよ。いつも廊下もリビングも煌々と明るいのに、真っ暗でさ、なんかヒンヤリとしてて、 虚しいんだよな」  1人暮らしの身には慣れた日常。でも、普段迎えてくれる人がいる身には、辛いものなのかもしれない。 「仕事で疲れて帰ってんのに、そりゃないだろって思うだろ」  しかし。ここはやはり子供ではないんだから、我慢してもらいたい。 「そんなの、僕なんか毎日ですよ」 「だろ? だからツイン頼むから。ツイン」  指をVの字に立てて、突き出してくる。 「は? なんですか。それは」 「勿論、奢るから」  な? と言いながら、肩に手を回してくる。 「明日は仕事休みだし、心置きなく飲むぞー」  短く洩れた僕の溜め息を、同意の印と受け取ったらしい。上機嫌で院長室の鍵を閉めた彼は、「ああ、そうだった」と人差し指を突き立てた。 「お前に、智恵子から伝言があったんだ」
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