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「本当に、散らかってるからね」
念を押しながら電気を点ける。明るくなった室内に、彼は「へぇ」と声を洩らした。好奇心に満ちた瞳が四方を見渡す。
「洗面所は廊下の右のドアだから、手洗って口濯いでおいで。冷やさないと」
ガスのスイッチを入れて自分もキッチンで手を洗いながら、藤堂君に声をかける。ハッとした彼は、「はいッ」と小気味よい返事を残し、リビングから走って出て行った。
「これで冷やして」
保冷剤をハンドタオルで巻いた物を、戻って来た藤堂君に手渡す。
「すみません」
ペコリと頭を下げてそれを受け取ると、ゆっくりと腫れた口元へとあてた。
「折角のかっこいい顔が台無しだね」
「今、洗面所の鏡で見たら結構腫れてたから、自分でもビックリした」
ヘヘッと笑いながら、10帖程度の部屋を見回している。
「そんなに、興味あるの?」
好奇心の塊のような瞳に問いかける。すると彼は、「1人暮らしの人の部屋にあがるの、初めてだから」とまた笑った。
「先生はさ、なんでこんなに帰り遅かったの?」
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