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「え? マジ? でもここ、こんなに有名になったら混んでんじゃないかなー。平日とかでも、行列出来てたりして」
「じゃなくて。さっきの」
言うと彼は、バッと顔を上げて、信じられないといった表情をした。
「――マジで?」
「うん。本気で」
「男2人で行ったら、変な目で見られるかもしんないよ?」
「いいじゃない、別に。僕は平気だな」
顎を突き出すようにして言ってやると、嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「じゃ、俺も」
しばらくは黙ってページを捲っていた彼は、「ねぇ、先生」と視線は上げずに呟いた。
「俺、最近さ。女って気持ち悪いとかって思うようになってきたんだけど。これって異常?」
「…………」
なんと答えていいのか、判らない。同性を好きになっている僕が、彼を異常だとかそうでないとか、言える筈もなかった。
「母さんがさ、よくあいつに媚びるような真似するんだ。色目使うって言うかさ。甘えたような声出したり……。もう俺、それが気持ち悪くて、近頃は見てるだけで吐きそうになるんだ」
「それは……」
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