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母親だって女性なのだ。好きになる男性もいるだろうし、相手の気を惹きたいとも思うのだろう。
だが彼は、息子としては、そんな母親を受け入れられないに違いない。
自分の母親が他人に色目を使っているサマを想像して、少し気持ち悪くなる。
両方の、気持ちが解るような気がした。
「んで気付いたらさ、クラスの女とかも結構そんな目を向けてきたりとかしてんだよ。話してても、変な声出してきたりとか……。俺に とっては、気持ち悪い以外の何物でもないのに」
嫌悪に彼の声が震える。
「それなのにさ、溜まるんだ。男だから」
―― 『なあ、キスした事ある?』
彼の声に、あいつの声が重なる。あまりにリアル過ぎて、今、彼に言われているのかと思ったぐらいだ。
「イヤなんだよ、もう。こんなの――」
くしゃりと前髪を掴み、その腕で顔を覆う。
「まるで病気みたいにさ、『したい、したい』って思ったりするんだ。それなのに……」
「女の子とするのは、気持ち悪い?」
ピクリと彼の肩が反応する。顔を上げないその態度が、僕の言葉を肯定していた。
「異常じゃない」
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