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 次の日の休みは食事をするのも億劫で、1日中ベッドで過ごした。  何度も訪れる眠りの中。何度も僕は過去に戻った。  あいつ、雅臣(まさおみ)が現れては、慰めるように懐かしい笑顔を僕に向けてくれる。  高1の夏休み。  あの頃が僕にとっては、1番幸せな時期だったのかもしれない。 「なあ、キスした事ある?」  それまでしていたゲームのコントローラーを床へと転がし、雅臣はベッドの側面へと背を預けながら僕を見た。 「うー。……ない、ケド」  その頃の僕達は、『経験』のない事はイコール『恥』な事で。クラスで男子が集まれば、話は自然に『女』とその『経験値』に集中し た。 「そっか」  安心したような、ガッカリしたような、微妙な声音で雅臣が呟く。 「そっちこそ。どーなんだよ?」 「俺もない」 「は?」  あっさりと答えた雅臣に、唖然とする。 「なんだよ」  拗ねたように、怒った口調で返してくる。 「いや、だって。何回か女子から呼び出されてたりしてたから、てっきり」 「ああ」  納得したように頷いた後、あいつは言葉を続けた。
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