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「でもさー。そうは言っても、ヤリたいよなぁ? 男だし」
「まあね」
段々と具体的になっていく話に、顔を逸らせて苦笑する。
「なあ。試してみようか? ――キス」
少し低めに囁かれた台詞で、一気に体温が上がった。
「なっ……、な……」
何を言いだすんだ、と口に手を当てて雅臣を見返す。すると彼は「冗談じゃん」と言ってケタケタと笑った。
「宙、かぁーわいー!」
揶揄うようにニヤけた声で言う雅臣に、「ばかッ」とそっぽを向く。
その後の2人の間に流れる微妙な空気は、やけに僕を緊張させるモノだった。
「――唇舐めんなよ、イヤらしい」
「は?」
突然の言葉に思わず顔を向ける。するとニヤニヤした顔の雅臣が、こちらを見ていた。
僕を緊張させていたのは、雅臣のこの視線だったのだと気付く。
「お前こそッ! そのニヤけた顔がイヤらしい!」
指差した途端、視線が交錯した。
ああ、ダメだ。
――判っていたのに。
緊張の本当の意味も、視線を合わせてはいけない事も。
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