2/7
前へ
/136ページ
次へ
 診療が終わると、僕と院長は『院長室』でコーヒーを飲むのが日課になっている。  ここに勤め始めた頃は片付けと掃除を手伝っていたのだが、それが返って彼女達にとっては『有難迷惑』な事だったとしばらくして気が付いた。  彼女達は掃除をしながら今日来た患者さんの事や昨日のテレビ、そして彼氏の事などを話したいのだ。  だがそれには僕が邪魔なようで……。 「やっと気付いたか」  何日かしてから居場所がなくて院長室に入って行くと、愉快そうに笑った院長からそう言われた。そして初めてコーヒーを淹れてもらった。 「美味い」  そう呟いた言葉が嬉しかったのか、それからは毎日院長の淹れてくれるコーヒーをご馳走になっている。  院長と言っても、僕と3歳しか変わらない。29歳で開業して1年後、大学の後輩である僕に声をかけてくれたのだ。  ここでの仕事は遣り甲斐もあって、勉強にもなる。7人いるスタッフの女の子達も、中々いい子揃いだった。  院長と向かい合ってコーヒーを啜っていると、コンコンッと小さな音と共にドアが開いた。 「院長、久坂先生。お先に失礼します」
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加