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「そういえばお前の名は何ていうんだ?」
「黒蘭」
「名まで黒いのか」
私は声を漏らして笑った。久しぶりに声に出して笑うと、何だか胸から重みが消えたようだった。この重罰を抱えていかなければならないのに、なぜか涙が止まらなくなったのだ。
彼はもうこの日のことを覚えていないかもしれない。それでもいい、私が明瞭に覚えてさえいるなら。
彼から貰った名で、彼が与えてくれた新しい一歩のために、私はここにいる。
「レイー!」
「遅刻するわよー」
扉の前から友人の声がする。適当に返事をして、私は荷物を持って駆け出した。
これもまた、彼が与えてくれた新しい友人と過ごす日々。私は彼らを今度こそ守ると誓おう。
さあ、また新しい一日が始まる。
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