『糸乱』

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中央国の勅命により、国軍とギルドに援助活動を要請した。しかしギルドと軍は犬猿の仲であるため、互いに常に険悪な雰囲気を出していた。また彼らは十六歳の少女に指揮権があることに矜持を損なうと示した。 それを少女は彼らの喧騒や主張を有無と言わせずに、誰よりも的確な指示と詳細な救済処置による行動を示してみせた。この学園の教師までも萎縮してしまうほど、大人さえ焦燥する場面で、彼女は上等に渡り合う。 「子どもの模範となる大人がいつまでも子どもの前で情けない姿を晒して恥ずかしくはないのですか。あなた方は喧嘩しに来たのですか、それとも矜持の高さを見せつけに来たのですか、それでは仕方がありません。ここで無能と判断した奴は居ても仕方ない、私が消してやる」 レイは冷徹に言い放つ。 もうこの場で、彼女に疑惑を持つ者は誰一人としていない。 チャイムが鳴る。レイは教室に急ぎ足で向かっていた。 ギルドと軍は校舎の外で修復作業や結界の強化などを行うためによく見られるようになった。その中には、異名を持つような階級の高いギルド員もいれば、功名を立てた軍人もいる。生徒は皆、彼ら見たさに休憩時に窓から眺めては憧憬している。そんな姿をレイは自分と重ねながら微笑ましく思っていた。 今回の襲撃事件は今後戦を経験するだろう子供らにとって、将来を考えるに良い刺激になったのではないだろうか。平和と安全は決して約束されたものではないことがよく理解できたはずだ。 それ故に、学園中が外敵の恐怖心を拭えないでいた。守護する存在がいると理解していても、敵の再来に備える彼らの姿は不安を募らせるのに十分であった。
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