59人が本棚に入れています
本棚に追加
ガラリと教室の扉を開く。
「すみません、遅れま……」
教室に入ると、レイはクラスメイトから異様な目で見られた。憧憬、畏敬、悔恨、羨望──慣れたはずの視線に久方ぶりにゾクリと背筋を這う。自分の今の立場を考えれば、彼らにとって異端者と何ら変わらないのだ。覚悟していたことだ、今更後悔はない。
「すみません、用事があり少し遅れました」
「あ、ああ。いいんだよ。席に座りなさい」
狼狽する教師に一礼して、レイは自席についた。
「れ、レイ……」
隣からアミーゼ声をかけた。
「大丈夫……?」
「何が?」
「……ぇ、あ、いえ……」
気まずげに伏せられた顔。
彼女もまた皆と同様に、立場の違う自分と関わるのを恐れているのだ。クラスメイトだとか、同年代の友人だとか、そんなものにはもう戻れないのだろう。これも覚悟していたことだ。自分と彼らは生きてきた環境も住む世界も違うのだ。
「大丈夫だよ」
レイは笑って返した。
何に対する返答なのか自分でも明確にはわからない。しかし彼女の懸念が少しでも減ればいいな、と思った。
最初のコメントを投稿しよう!