『糸乱』

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授業が終わり、学園は安堵したように静寂に変わる。 レイは静かな廊下を歩きながら、窓の外に目を向けた。 天高く上がるのは、大きな狼煙。全ての元帥の召集を促すために用いられる非常用のものだ。事件後の約一ヶ月間、毎日打ち上げられ続けているが、肝心の元帥らの返答信号が一切ない。誰一人として──。 黒蘭は使い魔のゼウスをギルドを守護するために召喚し続けている。その消費魔力量も心配だが、一番は彼が自分の代理を必要としていることだ。それほど負傷しているのか、または何か別の理由があるのか。 使い魔が召喚され続けている限り、術者の生存は確定される。今、自分に出来るのは、彼の無事を祈ることだけだ。
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