『糸乱』

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その日の夜、レイはギルドを訪れる。紺一色のローブを身につけて、二人の門番の横を通り正門をくぐる。しかし、今までと違いフードを被っていなかった。 「おい、待てそこのお前」 「私ですか?」 「そうだ。見かけない顔だな、どこの部隊の者だ」 フロルガーデンには各ギルド員のローブの胸元に所属する部隊を表す生物の柄が描かれており、必ず一人一つの隊に配属する決まりがある。とはいえ、部隊とは名ばかりで集団で活動することはないため、普段の任務や生活を縛るものではない。因みに、各部隊の隊長は帝である。 フロルガーデンは国王の勅命の任務を与えられる唯一のギルドである。故に、ギルド員は任務中、国家・国民・国土の危機や異変に繋がるものを見聞した場合、報告する義務が同時に発生する。当然、その情報を正式に受理された場合、国から妥当な礼金が与えられる。 各ギルド員は一つの通信機を所持しており、自国の異変に気づき次第すぐに報告できるように備えている。その通信機は直接自分の隊の隊長に届き、一ギルド員では処理しきれない案件を隊長が自ら出向いて即解決するように努める。帝が手に終えない案件であれば元帥が出向くことになる。 つまり何が言いたいかというと、ローブの背に柄が描かれているのは帝とギルド員のみ。描かれていないのは元帥のみ、しかし彼らは素性を明かさぬ者ら。だからレイが顔を隠さず、またローブに柄がないのは明らかに可笑しなことである。門番の彼らはそんな彼女をフロルガーデンのギルド員ではないと疑っているのだ。
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