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「私はどこの部隊にも所属しておりませんが、間違いなくフロルガーデンの者ですよ」
「部隊にも所属していないギルド員がいるはずがない。妄言など吐かず、正式にギルド員になりたくば手続きをきちんと終えてなさい」
「そうだ。このギルドは性別や種族の差別はなく、皆平等に扱ってくれる。心配することはない」
彼らはどうしてもレイを嘘つきにしたいらしい。フロルガーデンに所属したいばかりに、それ相応の格好をし、嘘八百を並べていると言っているようで──。
レイは面倒だと言わんばかりに嘆息を吐き、懐からギルドカードを出した。
「これがこのギルドに在籍する証明です」
「……確かに、フロルガーデンのものだ。しかし、部隊欄に名前がないのは──?」
門前で執拗な会話をしていると、レイを呼ぶ声によって一時中断された。その人物を見て、門番は驚愕し、身を引き締めた。
「なっ、オルド総帥!」
「なぜ、こちらに!?」
普段、執務ばかりをこなしているオルドの姿を見ることは珍しい。
「門前が騒がしいと報告があって来た」
恐らく、報告にあった門番と口論になっている特徴とレイの容姿が一致し、足を運んだのだろう。オルドは苦笑しながら口を開いた。
「紺は俺が呼んだんだ、心配はいらない」
「ですが、この者のギルドカードには所属する隊が記載されていませんでした。本来、このような実例は……」
「あるじゃないか、隊に所属していなくても許される称号者が」
「……そ、それって」
門番はレイに顔を向けた。その眼差しは核心を突くように、尊敬と驚愕に目を見開いている。
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