『糸乱』

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オルドは彼らのそんな表情に吹き出すように笑った。 「まあ、元帥ではないがな」 「え、それなら彼女は一体……」 オルドは勿体振るような発言で、門番を困惑させる。 その姿に、レイは呆れて苦笑を漏らす。普段と変わらぬ様子の彼に、強張っていた身体の力が抜ける。弟のように接してきた幼馴染みの連絡が途絶えた今、オルドの様子が心配していたが、杞憂だったようだ。 「総帥、あまり彼らで遊ぶのはお止めください」 「いや、な。新鮮な反応で思わず。悪い悪い」 「こちらこそ、遅れて申し訳ありません。学園の方がまだ収集がついておらず、ギルドまで手が回りませんでした。やはり私は未熟ですね、黒様がいれば違うのでしょう」 「謝る必要はない、俺が突然連絡したのが悪い。それに、黒と比べれば培ってきた経験値もこなしてきた仕事量も違う。レイが出来ないのは当然だ」 分かっている。しかし、いやだからこそ未熟である自分が悔しいのだ。幼馴染みの彼に長年付き添ってきたにも関わらず、未だ力量追い付いていないことが思い知らされる。 「総帥にもまだ黒様からの連絡がないのですか?」 「ああ、まあな。精霊王がいる限り、黒が無事であることは分かっているんだがな……。黒がいないことで人手不足が大いに目立つ。今は何とか保っている結界も、いつ均衡が崩れても可笑しくない」 「ギルド員にも黒様がいないことで不安が募っている状況です」 「ギルド員の活動を把握し、中央と西の国内または国外の環境・地域情報の伝達、生物の活動記録などを黒が行っていたお陰で上手く均等に取れていた運営も傾いている状況だ」
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