0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
さあさ、どうぞおいでなさい。
ボクの大切な大切なおもちゃ。
少年は、沢山の玩具に囲まれながら歌う。
楽しそうに。嬉しそうに。
少年は、白いクレヨンで床に丸い円を書き足す。
さあさ、生まれなさい。
ボクの可愛い可愛いおもちゃ。
サラサラと慣れた手つきでクレヨンで文字も書いていく。
陣の中心にあるナニか、はとくん、とくんと静かに動いている。少年が歌う度、鼓動が早まって行く。
少年が歌いながら指を回すと、ナニかはつられて宙に舞う。鼓動が煩いばかりに早まって、そしてパン、と宙で弾けた。
その光景を少年は目を細めて、パチパチて拍手をした。
「お誕生日だね、おめでとう。ケーキはないけど、ご馳走は沢山あるよ。さあ、沢山食べて大きくおなり」
少年は、クスクスと変わらずに楽しそうに笑むばかりであったーー。
「おい、何寝てんだ。起きろ、…人に労働させといて自分は寝るってどんな神経してんだ。コラ、おい!リベラル!」
「…バナナチョコデラックスパフェ!!!…むにゃむにゃ」
雑誌を丸めて頭を叩いても、まだ少し幼さが残るリベラルと呼ばれた青年は意味不明な寝言を叫んでまた夢の中へ旅立って行った。
はぁ、と心底呆れたように眠っているリベラルの相方は溜息をついた。今日何度目の溜息だろうか。
大体、リベラルが悪いのだ。報告書をまだ仕上げていないから上司に報告に行けないと言い、相方を使いに出して、先程上司から盛大に怒られて帰ってきた帰りなのだ。全くもって、不条理だ。
相方であるからには、自分にも責任は半分ある。リベラルに再三忠告はしたのだが、マイペースな彼を信じきって任せきりにした自分にも非はある。
だが。こうやって幸せそうに爆睡しているリベラルを目の当たりにすると頭の血管が2、3本程切れる音がした。
「いい加減にしろ、このクソ眼鏡!インチキ神父!」
「…あたたっ…!あ、リック。おはようございます。僕、寝てました?」
寝癖のついた栗毛の髪を触りながらリベラルはやっと目を覚ました。最も起きるまでに相方のリックの怒りの篭った鉄拳を約3発喰らっている。とんでもない寝坊助だ。
「何がおはようございます、だ!こっちはお前の代わりに怒られて来てやったんだぞ!少しは反省するなり真面目に仕事するなり、態度で示せ!」
このリックの怒りようでは、相当酷く怒られてきたのだとリベラルは察した。
最初のコメントを投稿しよう!