殉愛

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悪くない話だとは思った。 つつもたせなんて噂が流れてる以上、店を変えなきゃ男は捕まらないし。 ここみたいに静かなエリアが多くて、交渉しやすい店を探すのも面倒だ。 なにより、その利害は一致する。 ただ、どうせなら… 「1人暮らし?」 「え?…まぁ」 「じゃあさ、しばらくかくまってくれない? そしたらその話のってあげる」 「…いいけど。 誰かから逃げてるの?」 「そう、全てから」 こんな世界逃げ出したい。 だけど出来なくて… せめて知らない場所に逃げたかった。 この現実から逃げれるわけじゃないのに。 ふいに。 今彼氏になった男が、私の前に手を差し出す。 「俺、吉永響(よしながこう)。 なんか順番が変だけど、これからよろしく」 「… 北原憧子(きたはらとうこ)、よろしく」 とりあえずその手をとって… 私たちの身代わり関係が始まった。
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