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それから私たちは、タクシーで響の家に向かった。
「近いのね」
「そう、だからあの店に通ってる」
「歩いて帰ればよかったのに」
「うん、でも憧子さん寒そうだったから」
「それはどーも」
憧子さん…
タクシー内の会話で、響が23歳だと知った。
そして私が3つ年上だと知った響は、名前をさん付けで呼ぶ。
「狭いけど、どうぞっ」
「嫌味?」
「え、なんでっ?」
狭いから私が住むスペースないよ?って言われてるようで。
けどそうじゃなく…
ほんとに狭い、1DK。
でもかなりハイセンスで、綺麗に片付けられていた。
ふと、人影を感じて視線を向けると。
「生首…
なんのプレイ?」
「あぁそれ、仕事用。
急に閃いた時とかに便利で。
それより怖くなかった?
それ見て驚かなかったの、憧子さんが初めてだよっ」
怖くなんかない。
怖いという恐怖心は、生への執着から生まれる感情だから。
「仕事用って、美容師?」
「うん、これ名刺」
会話の流れから渡すつもりだったようで、すぐにそれは差し出された。
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