殉愛

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翌日。 「ちょっ、憧子! なにその荷物っ、どこ行く気なの!?」 サービス業の父さんがいない隙に抜け出して、事後報告するつもりだったのに… 母さんに見つかってしまった。 「友達の家。 しばらくそこで暮らすから」 「は…? 何言ってるのっ、何考えてるのっ! あなたまだそんな状態じゃないでしょ!」 「大丈夫だって!私はもう大丈夫っ… 仕事だってちゃんとしてるしっ、母さんの言う通り立ち直って来たじゃないっ」 「まだ薬に頼ってて何言ってるの! だいたい友達って誰なの!?成美ちゃんっ?」 「…会社の人」 「だから誰なの! 知らない人にあなたを任せられないわっ… …まさか。 あなたまさかっ、また竹宮さんの家に押し掛ける気っ?」 竹宮一真(たけみやかずま)。 それは亡くなった彼の名前で。 うろ覚えだけど… 私は以前その実家に、居るはずもない彼を探して居座っていたようだ。 「だから会社の人だってば! いいからもうほっといてっ!」 「ほっとける訳ないでしょう! あなた最近、深夜に徘徊してるでしょうっ? 変な男にも付きまとわれてたみたいだし… ねえっ、あなたがいつまでもそんな調子だと、天国の一真くんは悲しむだけよっ!?」
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