星の降る丘

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「君は誰なんだい。」 寝転んでいた体を起こしながら、そう私が尋ねれば、女は一瞬、僅かに目を見開いたが、また元の静かな微笑みを浮かべた。 「それは良いのです。貴方はまた、すぐに忘れてしまうのですから。」 私は不思議に思ったが、女はそれを遮るかの如く、私の手を取った。 「さあ、参りましょう。星を掴みに。」 不思議な気分だった。 「君は何を言っているんだい。掴むといっても、掴むことなんてできないではないか。」 女は楽しそうに声を上げて笑った。 「何をおっしゃっているのです。星は掴むことができるのです。」 女は歌うように言った。私は信じられなかった。同時に、自分の中に、高揚している自分がいた。 「掴むことができる……?」 「えぇ。参りましょう。」 女は私の手を控えめに引いた。 次の瞬間、私は自らの目を疑った。ふわりと女の体が宙に浮かんだのだ。女は艶やかな長い黒髪を風で遊ばせながら、綺麗に微笑んだ。 わたしの体もふわりと宙に浮かんだ。徐々に遠ざかっていく丘を見ても、不思議と恐ろしさは感じなかった。 女と私は、地面を駆け上がるかの如く、上へと向かっていく。宙に浮かび、足場はないはずなのだが、足は確かに地面についているかのようにしっかりと踏んでいる。 星がもうすぐで掴むことができる…そう思うと、楽しみで楽しみで仕方がなかった。 「あなた方も星集めですか?」 不意に陽気なアルトの声が聞こえ、その声の下方向に目を向ければ、小さな茶色のバスケットを持った、小さな白い兎だった。その兎は、まるで地面があるかの如く、宙を跳躍しながらこちらへと近寄ってくる。 「えぇ。白兎さんもですか。」 女は静かな笑みを浮かべながら尋ねた。小さな白い兎は大きく頷く。 「えぇ、そうですよ。それなら一緒に参りましょうか。」 「いいですね。参りましょう。お兄さんも構いませんか?」 兎が、尋ねるように私の方へと体を向ける。 「構いませんよ。」 私は呆気にとられながらも、大きく頷いた。
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