星空の散歩

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目の前に広がるのは紫色と藍色の水性絵の具がパレットにおとされて混ざり合っていくような、淡い空。 私の足元にはキラキラと光る赤や黄色やオレンジ、緑、青……たくさんの光が点々とあって、眩しい光の宝石たちが、闇を溶かしている。少し目を細めて、上を見上げる。 銀色のキラキラが私の上を宝石箱をひっくり返したみたいにたくさん広がっている。私は手を広げる。 上にも下にも宝石が一杯だ。 私は夜の闇を蹴る。 私の体はふわりと浮き、紫色と藍色の中に混ざりかけていた白いワンピースがふわりと浮かぶ。完全に闇に溶けていた濃淡で長い髪も、背中にかかっていた感覚がなくなる。 長いワンピースの裾をつまみ、ふわりと回った。ステップを踏むように足を踏み出して、軽やかに舞う。白いワンピースが優しげにふわりふわりと舞い上がり、私と共に髪も柔らかに舞う。 ゆっくりと目を閉じる。目を閉じても闇は広がっており、宝石たちが、柔らかな闇が見えるよう。私は口元に笑みを浮かべると、紫色と藍色の混ざり合っていく闇を軽やかに舞う。 柔らかな闇が私を包んでいる。目をつぶっているのかいないのか分からない。キラキラ光る宝石たちに囲まれながら、私は空を駆ける。 さらさらとちいさな銀色の宝石が落ちてくる。暖かい……。手を差し出し、両手ですくうようにすれば、銀色の宝石がみるみるうちに山を作っていく。私の黒い髪にも体にも白いワンピースにも宝石が積もっていく。柔らかく柔らかく積もっていく。 上に輝く宝石が、下で輝く宝石たちに降り注いでいく。宝石が混ざり合い、きらめいている。 私は手を広げながら、駆ける。キラキラと銀色の宝石が降り注ぐ藍色の空を。 ーendー
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