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“奥方を思っているアースレイだからこそ自分はひかれたのではないか”と。
何かを思う人が美しいのを蜘蛛は身に覚えがあった。
思えば、あの蜂鳥にあって着いていこうと決めたのも彼の中にある“人を思う姿”にひかれたに他ならない。
その考えに辿り着き、それは蜘蛛の中でストンと落ちて消えた。
そして、納得し改めて感じた。
自分は恋をしたのだと。
「こんな邪な気持ちを持ちながらお仕えする事を……許していただけるわけがない……」
許されない気持ちを抱えて蜘蛛は、決して伝えられない言葉を無人の部屋で吐いた。
「お慕いしております……アースレイ様」
決して伝えられない言葉をなぞるように。
そして蜘蛛は、微睡みに身を任せて、眠ってしまうのだった。
あわよくば、夢にかの人が現れますようにと、思いながら。
fin
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