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蜘蛛
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就寝時間になり、屋敷を見て回る。
何かがあるのはいけないと見回り組があるのだ。
手にランタンを携えて見回り、違和感を感じて中庭に出ると屋敷では見慣れない人影に蜘蛛はざわついた。
あちらも気づいたようで逃げようとするも動かない体に驚いているようだ。
そんな姿の相手に蜘蛛はニヤリと普段からはかけ離れた笑みを向けた。
辺りからは何かが地を歩く無数の音が場を支配する。
「闇に墜ちた私が放り込まれたのは蜘蛛がおさめる森でしてね」
「それはそれは沢山の蜘蛛が居たわけです」
一歩、また一歩と相手に近づいた。
「だからですが、蜘蛛とそれなりに会話が出来るのですが
彼女達の提案で糸をはってもらい正解でした…
こんな獲物、館の主が手にかけさせるわけにいきませんからね」
近づくに近づいて蜘蛛は相手の耳元で囁いた。
「おやすみなさい。貴方の一瞬の夢が甘美でありますように」
首筋に口づけを落とすのを合図に、蜘蛛が群がり
次に相手は跡形もなく無くなった。
それを見た蜘蛛はハンカチで口許を拭きながらまだ暗い空を仰ぎながら
「キスならいくらでもご随意に
ただ、私の首筋に口づけは主様以外はお断り致します。なんて、」
目元を細めたのだった。
fin
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