第1章

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「何もいらない、 瑛利華さえ、俺の物になるなら…」 「私ゃ物ちゃうわ… だいたい、何で私なんかがよう分からへん…」 「もう黙って? ねえ、チューしてあげるから顔上げて?」 「要らん。」 「ごめん、ウソ… チューしたいから顔上げて?」 「…」 「怖い? 初めて?」 「トラウマがあんねん… キスしたらなんかが減るんよ… でも奴は私の正体不明の何かを減らすだけ減らして逃げよった… クズや… 男のクズや… 私が今まで付き合ってきた男は皆そうや… ぶっ殺したろか、思うようなクズばっかや… 失敗する度に思うんや… やっぱり私は言われてるんやって… 神様から言われてるんやって… 貴女は恋愛をしていい人間ではありません。ってな… 恋愛なんかしてる間があるんなら、もっとやるべき事があるやろ?と… 私はそういう運命なんやなーって… そいで、勉強や… 外見も中身も体力も芸術的才能も生まれ変わらん限りは今更どうにもならへん… ただ、今からでも十分飛躍的に伸ばせる思うたんが、 学力や… この前言うた事、一つだけ訂正したるわ。」 「え?」 「人間としてクズな奴でも、頑張りゃ学力なんざいくらでも伸ばせる。 性格はそう簡単には変われへん。でも、学力は頑張った分だけ遅かれ早かれ必ず伸びる。 証拠はここにおんで? 馬鹿な奴だって嫌いやない。 でも、あんたは伸びる。 なんなら、私が保証したるわ。」 「ありがと…」 「男がすぐ泣くんやないよ、アホみたいに…」 「ごめん…」 「にしても、あれやな… 人の腕の中っちゅうんは、暖かいもんやな…」 「気付いたらギューってしてた…俺も暖かいよ? 瑛利華、とっても暖かい…」 「そりゃ、まだ生きとるからな。」 「死ぬ時は一緒だよ?」 「いくらなんでも、それは、重いわ。」
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