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さて、イルカショーも無事に終わり、客席の人々が一斉にゲートに向かって歩き出してくる。
いくら立ち見席でも、帰る人の波が押し寄せるので、ゆいが、
「先に出ていましょう。ゲートの外で待っていた方が確実ですよ」
提案すると、さすがに納得したのか、春一も素直についてきた。
しかしゲートを出てしまってからも、しきりに会場の中を気にしている。
冬依たちはまだ出て来ない。
まったく、少しでも自分の視界から外れていることが、不安でたまらないみたいだ。
どこまで心配性なんだと思いながら、
「春一さん、私少し離れた場所にいますね。ここだと、もみくちゃにされそうで」
実際さっきから、何度も足を踏まれている。
子どもたちにも、ぶつかられた。
背の高い春一ならいざ知らず、ゆいがこんな場所に立ち止まっていても、通行の邪魔になるだけだ。
春一は、
「ああ、ごめん。気が付かなくて」
ゆいに謝ってくれ、それから人の波が途切れるちょっとしたスペースまで、ゆいを連れ出してくれた。
「ここで待っててくれるかな。俺がふたりを連れてくるから」
春一が言うので、
「わかりました」
うなずく。
冬依と再び合流できるまで、次の作戦でも練っていよう。
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