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ゆいを中心にして、まるで波がひいていくように、辺りは静かに静かになっていく。
そして、
――ザワリ――
声ともいえないどよめきだけになった。
男に羽交い絞めにされているゆいを真ん中に、輪を描いて遠巻きに見ているギャラリーたち。
その中から、
「何だよあれ、痴話げんかか?」
「わかんねー。でもアレ、刃物だよな」
戸惑う気配だけが伝わってくる。
そんな中、
「ゆいさん!」
真っ先に緊急事態に気づいてくれたのは、春一だった。
「ゆいさん、今行く」
春一はこちらに駆けて来ようとするけれど、
「来るんじゃねぇ!」
男が怒鳴り声をあげる。
そして鎌の刃先を、グイとゆいの喉に近づけた。
「来たら、殺す」
「……」
さすがの春一も足を止めた。
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