4 クリオネの捕食

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相手はまったく知らない男なのだから、ゆいにストーカーされる覚えなんかない。 だから、 「ちょっとあんた、誰かと勘違いしてるんじゃないの。私は――」 ゆいが言いかけると、 「黙れ!」 喉元に、何かが擦れたときの摩擦のような熱を感じた。 「キャーッ!」 全然関係ないところで悲鳴があがる。 「ゆいさん、動くな」 今度は春一まで、決死の形相でゆいを諌める。 『なんだって言うのよ、まったく……』 そして首元の気持ち悪さに気が付いた。 もともと、海からの風は冷たいが、もっと冷たい何かが吹き込んでくる。 春一から借りたマフラーを、返してしまったように寒い。 まるで氷でも押し付けられたような、切るような冷たさ。 「!」 ようやく気がついて、ゆいはゴクリと息を飲む。 男の身体が密着している左側。 その左側の自分の肩が、血で濡れている。 さっきの熱さは、鎌で斬られたのだ! 「ゆいさん、動かないで」 春一だけが群衆の中から一歩前に出て、まっすぐにゆいの目を見つめながら真剣な顔で言う。 「じっとしてるんだ。すぐに助けるから」
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