4 クリオネの捕食

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男は左手でゆいの腰を抱き、右手に持った大鎌の刃を、ゆいの喉元に付きつけている。 男のハアハア言う息が耳のすぐ近くで聞こえ、妙に熱くなった身体が無理やり押し付けられるのが、ものすごく気持ち悪い。 だけど、ゆいはもうピクリとも動けない。 自分の血を見て、やっと実感出来た。 これは現実なのだ。 水槽の中の他人事じゃない。 少しでも動けば、するどい鎌の刃がゆいを襲うだろう。 「なあ……」 春一は少し悩みながら、 「そこの、君」 と男を呼んだ。 名前を知らないのだから、こういう呼び方をするしかない。 「彼女を放してくれないか。話しなら俺が聞く」 「ダメだ、ダメだ、ダメだ、ダメだ」 男は狂ったように叫んだ。 「お前なんかと話は出来ない。お前みたいな恵まれてるヤツに、僕の何がわかるってんだよ」
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