4 クリオネの捕食

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訳が分からない。 まったく知らない男から、まったくわからない理由で、ゆいは今、殺されそうになっている。 男は、 「キミはとてもいい子だ。僕にさっき挨拶をしてくれた」 それは覚えている。 水族館の入り口で、偶然目が合ってしまったから、気まずさをごまかすために挨拶をした。 「こんにちは」 「……どうも」 たったそれだけのやり取り。 男は、 「こんな僕に声をかけてくれるのは、キミだけだ。キミは本当に慈愛の天使だ。優しい人だ。ひと目で好きになった。だけどキミはあいつと付き合っている」 それは男が、挨拶をきっかけに、ゆいにひと目惚れをしたということだろうか。 だけど春一と一緒にいるところを見て、付き合っていると思い込んで激昂した。 それだけの理由? それだと、勘違いではある。 春一と付き合っているのは、ゆいではなく鈴音。 いや……、 「もう無理はしなくっていいんだよ」 男の声音が急に優しくなった。 「あんないい男と付き合ったって、キミは幸せにはなれない。キミはあいつに合わせようと無理に無理を重ねて、きっとボロボロになってしまう。そんな風になってからじゃ遅いんだ。だから僕が今、殺してあげる」 「……」 何を、言っているのだろう。 さっぱり、意味がわからない。
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