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5 シャチのひと噛み
そのとき、
――バタバタッ――
鳥がはばたいていくような足音がして、
「ゆい姉!」
冬依が駆けつけてきた。
少し遅れて鈴音が走ってくるのも見える。
「ゆい姉。何があったの。そいつは誰?」
冬依は聞くけれど、そんなのこっちが聞きたいぐらいだ。
そのままゆいに近づいて来ようとするのを、春一が腕を伸ばして冬依の行く手を遮る。
冬依はこのとき初めて春一に気が付いたようで、伸ばされた腕を見て、
「何なの、これ?」
目の前で繰り広げられている事態の説明を求めた。
春一は、ゆいから目を離さないまま、ただ小さく首だけを横に振る。
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