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すると春一が、
「なあ頼むよ。彼女を開放してくれないか」
冬依を群衆の中に戻して、自分だけもう一歩、前に進み出てきた。
「その人は、俺の大切な人なんだ」
男がゆいに抱いている『可哀そう』というイメージから脱却させるために、公衆の面前にも関わらず、そんなことを言い出す。
『幸せなゆい』を演出しているのだ。
「彼女を不幸になんかしないよ。彼女に無理もさせない。必ず幸せにする。
勘違いしているようだけど、彼女が俺を好きなんじゃない。俺が彼女を好きなんだ」
春一の告白がその場だけの『嘘』だということは、重々承知している。
だけれどそれでも、ゆいの頬は真っ赤になる。
緊急事態だが、この公開告白は、ちょっと恥ずかしすぎる。
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