100人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
3 イルカのジャンプ
ズカズカ歩いていく春一の前に強引に身体を割り込ませて、
「冬依くーん。ちゃんと羽、貰えたわよー」
わざと明るい声で叫んでみる。
もちろん、冬依に、春一が見ていることを知らせるためだ。
ゆいの声が聞こえたのか、ふたりはパッと離れるかと思いきや、冬依が強く鈴音の肩を抱いて、
「ゆいお姉さん、チーズ」
頬を寄せ合ったまま、ペンギンの羽を唇の前で構えた、ポーズを決める。
ゆいは慌ててスマートホンを出して、カメラを起動させた。
カメラを向けられれば、鈴音も動くことは出来ない。
冬依と一緒になって、人差し指を唇に当ててのカメラ目線。
パシャリと一枚、シャッターをきって、
「可愛く撮れたよ、ほら」
そのままふたりの側まで走っていった。
春一はゆいの後を追いかけて来ない。
「見せて、ゆいお姉さん」
そう言う冬依の隣に座って、スマホを掲げたら、冬依はゆいに顔を寄せてきて、
「ありがと、お姉さん」
小さく呟く。
その距離の近さに、ちょっとドキンとした。
最初のコメントを投稿しよう!