3 イルカのジャンプ

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3 イルカのジャンプ

ズカズカ歩いていく春一の前に強引に身体を割り込ませて、 「冬依くーん。ちゃんと羽、貰えたわよー」 わざと明るい声で叫んでみる。 もちろん、冬依に、春一が見ていることを知らせるためだ。 ゆいの声が聞こえたのか、ふたりはパッと離れるかと思いきや、冬依が強く鈴音の肩を抱いて、 「ゆいお姉さん、チーズ」 頬を寄せ合ったまま、ペンギンの羽を唇の前で構えた、ポーズを決める。 ゆいは慌ててスマートホンを出して、カメラを起動させた。 カメラを向けられれば、鈴音も動くことは出来ない。 冬依と一緒になって、人差し指を唇に当ててのカメラ目線。 パシャリと一枚、シャッターをきって、 「可愛く撮れたよ、ほら」 そのままふたりの側まで走っていった。 春一はゆいの後を追いかけて来ない。 「見せて、ゆいお姉さん」 そう言う冬依の隣に座って、スマホを掲げたら、冬依はゆいに顔を寄せてきて、 「ありがと、お姉さん」 小さく呟く。 その距離の近さに、ちょっとドキンとした。
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