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4 クリオネの捕食
イルカショーが開かれているステージまで行ったけれど、人が多すぎて座るのは諦めた。
別に席がないわけではないが、入ったすぐの椅子は空いておらず、座ろうと思えば、せっかくショーを楽しんでいるチビッコの前を、
「ちょっと、すみません」
横切らなくてはならない。
映画館じゃないのだから、そんなに気を使う必要はないだろうが、やっぱり春一は、一番後ろの立ち見席に立ったまま、会場全体を見回している。
もしかしなくても、鈴音の姿を探しているのだろう。
1000人は入れる広い会場の中だ。
ふたりと合流しようと思えば、携帯に電話をかけるか、それとも入場ゲート前でショーの終わりを待つのが一番早いし確実なのに、春一はどちらの方法もとらず、飽くことなく客席を目で探し続けている。
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