第1章

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木漏れ日の森林地帯で、一組のパーティーがモンスターと戦っている。 モンスターの1体が少女を突き飛ばし、少女は一時だけ気を失った。 だが目を覚ました瞬間…復活の喜びは恐怖の叫びとなる。 「きゃあああああっ!」 モーフィングのように、少女の姿がなめらかな動きで形を変えていく。 細長くなり…全身の色が白とキツネ色の2色に統一され…顔が消える。 戦闘不能になったPCはアバターをちくわに変更される。 ある疑似体験型オンラインゲームにて、こんな馬鹿馬鹿しいルールがアップデートされた。 さっきの少女も、モンスターとの戦闘中に運悪く戦闘不能となり…アバターをちくわにされてしまったのだ。 ただ、見た目と肉体の感覚の一部がちくわになるだけ。 キャラクターの強さや手に入れたアイテムなど、強さのパラメーターは変わらない。 ゲーム自体の敗退や解約も自由…よくあるオンラインゲーム事件みたいにログアウトが出来ないデスゲームというわけではない。 だが、このアップデートにより大半のプレイヤーがこのゲームからリタイアした。 稼いだアイテムや育てたPC…苦労を分かちあったフレンド登録PCすべてを切り捨てて。 それすなわち…分身たるPCとゲーマーとしての死。 こんな風にゲーマーのプライドを放り出した輩もいたわけだが…それでもこんなクソゲーに残る偏屈もいた。 ネット上であっても苦楽を共にした仲間と繋がりたい…このクソゲーを攻略して名誉としたい…そんな玄人たちの好奇心は多少なりと刺激されたらしい。 また、リアルにダチがいないからフレンドPCを切れなかったり…もったいなくて止めたくないとか変な未練タラタラで残っているPCもいたりする。 ネトゲであろうが、人がひとつの場所に留まる理由はいろいろだ。
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