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しゃがんでいた俺の、赤鬼のお面に豆がピシッと当たり、俺は唸りながらひっくり返る。
そして退場した。
"おゆうぎしつ"と書かれた看板の扉から這い出ると、中から大きな歓声が沸き起こる。
はじめの悲鳴よりも大きな声だ。鬼退治の達成感を味わえただろうか。
「お疲れさま」
「いえっ。こんな感じで大丈夫ですか?」
"上司"……園長先生は「完璧よ」と笑ってくださった。
今日のバイトは、保育園で節分イベントの鬼役をやる事。
無事にできたようだ。とお面をはずしていると、園長先生がにこやかに言った。
「2歳と3歳の子達が済んだので、次は4歳と5歳の子達ですよ。パワフルだから、頑張ってね」
と言われて、俺は一度着替えをした部屋に隠れた。
次におゆうぎしつに入ると、悲鳴もパワフルなら豆まきもパワフルで、俺は本気で逃げていた。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」
イベントが終わると、園長先生がお汁粉をご馳走してくれた。
「来年もお願いしますね、佐々倉さん」
「よろこんで!」
トレードマークの笑顔の裏で、とりあえずしばらくは大豆、見たくないなと苦笑いした。
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