元気と笑顔が取り柄です。

4/5
前へ
/5ページ
次へ
しゃがんでいた俺の、赤鬼のお面に豆がピシッと当たり、俺は唸りながらひっくり返る。 そして退場した。 "おゆうぎしつ"と書かれた看板の扉から這い出ると、中から大きな歓声が沸き起こる。 はじめの悲鳴よりも大きな声だ。鬼退治の達成感を味わえただろうか。 「お疲れさま」 「いえっ。こんな感じで大丈夫ですか?」 "上司"……園長先生は「完璧よ」と笑ってくださった。 今日のバイトは、保育園で節分イベントの鬼役をやる事。 無事にできたようだ。とお面をはずしていると、園長先生がにこやかに言った。 「2歳と3歳の子達が済んだので、次は4歳と5歳の子達ですよ。パワフルだから、頑張ってね」 と言われて、俺は一度着替えをした部屋に隠れた。 次におゆうぎしつに入ると、悲鳴もパワフルなら豆まきもパワフルで、俺は本気で逃げていた。 「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」 イベントが終わると、園長先生がお汁粉をご馳走してくれた。 「来年もお願いしますね、佐々倉さん」 「よろこんで!」 トレードマークの笑顔の裏で、とりあえずしばらくは大豆、見たくないなと苦笑いした。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加