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希子という人間は泣いてばかりいるが、藤原が見ても驚く程の行動をするという。
「……前に、佳親さんがトラブってね、拉致された事がある。季子さんは、警察よりも先に佳親さんを探し出して、犯行組織に啖呵を切った」
「……どんな?」
藤原が、やや青ざめる。
「始めは腹を壊す、食べられなくなる。やがて、やせ細って餓死する。そういう薬を、貴方たちの周囲に撒いてきた。助かりたかったら、佳親君を開放して謝りなさい!そして処方して貰いなさい!」
「それで?」
言ってから季子は帰ったのだが、その言葉の通りになり始めた。全員の腹が下り、何も食べられなくなり、点滴になる。しかも、じわりじわりと周囲にそれが広まり始めた。
「季子さん、よく無事で帰れたね」
「それは、季子さんが警察と連携していたから、相手も季子さんを拘束できなかった。季子さんは、自分も犯人の一人のように誤解させて、警察に尾行させていた」
そして、三日後、犯行組織は佳親に詫びを入れて解放した。子供達が、脱水症状で危篤になったためだ。
「佳親さんは、すぐに処方した。それで、全員助かったけどさ」
藤原も実際に見て怖かったという。季子は、泣いていても、引く事がなかった。佳親を助ける事しか、季子には無かった。
「ちょっと、季子さん印貢に似ているよね。無鉄砲な面は、佳親さんよりも、季子さんに似ている。不思議だね」
食べ終わって寝転ぶと、藤原も横に転がった。
「やっぱり、弘武と露天風呂に入りたい!俺、弘武の裸を見たいしね」
下心を全面に出されると、むしろ反論でいない。
「裸で百年の夢が覚めるかもよ」
俺が、しっかり男だと認識できるのではないのか。
「じゃ、行くか!」
そこで、風呂グッズを用意して廊下に出ると、藤原家の露天風呂は屋上にもあった。
「寒い!」
「親父なんてな、佳親さんとり二人で入る用のジャグジーと露天風呂を持っている。佳親さんを、誰にも見せたくないからだと、堂々と説明までする」
飛び込むように露天に入ると、やはり雪が降っていた。
「親父もきっと、露天風呂で雪見酒と雪見エッチだよ」
それは、考えたくない。やっと体が温まったので、少し風呂から体を出してみると、この露天は街の方に面していた。街の光を見下ろして、露天風呂がある。
「尻は怪我がないのか」
「どこを見ている!」
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