学園刑事物語 電光石火 幕間

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 山を越えた時であろうか。その時の映像も流れてしまっていたのか。 「……もう二度と印貢と会えなかったら、俺は印貢を忘れられるのだろうか?」  二度と会えなくても、忘れられない人もいる。 「帰って来たよ……俺は、ここに住んでいるからさ」  藤原は何度も頷いていた。  そこでやっと、藤原も家に帰る気になったようで、俺のコートのファスナーを上げてくれた。  参道に出ると、歩いてきた足跡が既に消えかかっていた。何分、ここにいたのだろう。  再び歩き出すと、藤原も横を歩いていた。  静かな商店街は、全て閉まっていた。  何の足跡もない新雪を踏み締めていたが、途中から大量の足跡があった。 「?何だ?この大量の足跡?」  縦横無尽に足跡があり、その靴も様々であった。まさか、深夜に雪合戦でもしていたのだろうか。 「……佳親さんが、弘武がいない事に気付いてしまったかな」   俺は藤原の顔を見た。  藤原も深夜なのに、何故、こんな場所にいたのだろう。きっと一人では来ていないので、親父である将嗣も一緒なのではないのか。 「まさか、気付いていないでしょ」  部屋が離れているので、普段でも接触は少ない。 「いた!!いましたあああああ」  奇声の後に赤い服が遠くに見えた。 「兄さん?」  サンタクロースの服を着た佳親が、走ってこっちに向かってきていた。 「弘武!」  佳親の形相が怖いので、思わず後ろを確認する。佳親の後ろには、将嗣も走ってきていた。 「何だ?」  つい、後ろに逃げようとすると、藤原が俺の腕を掴んだ。 「印貢?どこに行くの?」  どこに行くあてもないが、何だか怖い感じがする。 「弘武!」  佳親が飛びかかってくると、俺は次の瞬間空に飛ばされていた。佳親が思いっきり、俺を持ち上げていたのだ。 「弘武!俺の息子!プレゼントを用意していたのに、見つからないから怖かった」  佳親はそのまま俺を抱えていた。 「今まで過ごした半年が、幻みたいに思えたよ……」  征響と季子も参道に来ていた。他に、征響の幼馴染の、秋里と倉吉も一緒に参道に立っている。でも、その全てが家の方角から来ていたので、奇声を上げたのは誰であったのだろう。俺が上を見ると、近所の人がピースしていた。 「良かった、見つかって……」  見つかってというが、俺はちゃんと行き先を言っていた。家出でもない。 「……降ろしてください」
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