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足をジタバタさせてみたが、佳親は俺を降ろそうとしない。
「季子、サンタから俺達へのクリスマスプレゼントが届いたね」
希子が優しく頷いていた。
「はい……ケーキを用意しています」
もの凄く寒いので、温かいものが食べたい。これで、ケーキを食べろと言われると、結構きつい。
「あの、着替えますので、部屋に行きます」
雪で濡れた靴下をはやく脱ぎたい。
「そうか」
やっと佳親が降ろしてくれたので、とにかく心配をかけたのだろうと頭を下げる。
「すいませんでした!」
部屋の階段を登り、明かりをつけると布団の準備をする。
シャワーを浴びていると、幾度も窓を叩く音がしていた。もう少しシャワーを浴びていたかったが、あまりにしつこいので腰にタオルを巻いた状態で、ドアを開けてみた。
立っていたのは佳親で、サンタクロースの恰好からは着替えていた。
「弘武!母屋に夕食を用意してあるから早く来い」
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。もう深夜ですので、明日の朝にご馳走になります」
正直に言うと、早く眠りたい。
「……そうするか」
佳親は母屋に戻って行った。
窓から外を確認すると、藤原親子も帰ったようで車が無くなっていた。
次の日、俺は食事などすっかり忘れて、早朝からバスケの練習に行ってしまった。
誰も練習に来ていないが、体育館に忍び込むとひたすら練習していた。その内に、休みであるのに幾人か来てしまい、一緒に練習していると昼過ぎになっていた。
「印貢、体育館に忍び込んでの練習は止めてね」
バスケ部の顧問、井上は眠そうであった。井上は学校側から、バスケ部が練習していると、呼び出されたらしい。
「他に行くところが無かったもので、つい」
井上が長い溜息をついていた。
「まあ、雪の中で眠っていられると困るけどな」
まさか、井上もテレビを見てしまっていたのか。
「……テレビを見たのですか?」
「……皆、見ているよ……大騒ぎだったよ。墓の横で印貢が眠っている。死んでいるのではないのかってさ。俺の携帯を見るか?百三十件の問い合わせ」
井上が眠そうな目で、俺を睨んでいた。井上は、俺が家に帰るまで、眠る事ができなかったらしい。
「母親の墓の横で眠る少年ってな……心臓止まるよ」
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