48人が本棚に入れています
本棚に追加
両親がいなくて、虐待されているのではないのかなどの憶測も飛んでいた。余程、辛い事がないと、雪の中で墓参りに行き、しかも、眠っていないだろうというのだ。
俺の転寝のせいで、本当に迷惑を掛けてしまった。
でも、最初に画像が流れたのが昼のニュースの一瞬であったので、気付いた人は少なかった。それが、夕刻になり、再び画像が流れ、それが長かったので気付いてしまったらしい。
「俺も、驚いてタバコを落としたよ……」
現代版、フランダースの犬などとテロップも出てしまったらしい。俺の素性は、未成年であったので隠してくれたが、それでも話題になっていた。
「タバコを落とした先が悪くて、火傷もさせるし……」
火傷というのは、人間に落としたということか。井上も誰かと会っていたのか。
「まあ、曇り空から、印貢の所に光が射しこんでいてね、天使が降りてきたなんて話題にもなるし。印貢が、また、見た事もないような安心した表情で眠っているから、ご婦人や老人の涙を誘っていたよ」
「……すいませんでした」
謝る他はない。
「俺に謝るのはいいから、季子さんを泣かさないようにね」
そこで、やっと俺はケーキを取ってあるということを思い出した。
「薫ちゃん。四区のおいしいケーキ屋ってどこですか?季子さんに謝らないと」
「薫ちゃんではない、先生と呼べ!」
怒りながらも井上が、おいしいケーキ屋を紹介してくれた。
「……ここから遠いですね」
徒歩なので、結構時間がかかる。
「しょうがないな、家まで送ってやるよ」
井上が車でケーキ屋まで行き、家までも送ってくれるという。
「ありがとうございます!」
しかし、ケーキ屋に行くと、既に売り切れになっていた。
「……次、行くか……」
数店巡ってみたが、どれも人気の品は売り切れになっていた。
「隠れ名店もあったな」
井上もムキになり、かなり離れた場所まで来てしまった。
「よし!」
ケーキではないが、手作りシュークリームを買いこんだ。
「食べてゆくか」
シュークリームを食べるのかと思ったら、近くのラーメン店に入っていた。
「生徒に奢るというのも、ダメなんだけどね」
でも、井上がラーメンを奢ってくれた。
「印貢、佳親さんに遠慮のし過ぎではないの?」
ここのラーメンも美味しい。豚骨味ではあるが、かなりあっさりしていた。
最初のコメントを投稿しよう!