学園刑事物語 電光石火 幕間

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 両親がいなくて、虐待されているのではないのかなどの憶測も飛んでいた。余程、辛い事がないと、雪の中で墓参りに行き、しかも、眠っていないだろうというのだ。  俺の転寝のせいで、本当に迷惑を掛けてしまった。  でも、最初に画像が流れたのが昼のニュースの一瞬であったので、気付いた人は少なかった。それが、夕刻になり、再び画像が流れ、それが長かったので気付いてしまったらしい。 「俺も、驚いてタバコを落としたよ……」  現代版、フランダースの犬などとテロップも出てしまったらしい。俺の素性は、未成年であったので隠してくれたが、それでも話題になっていた。 「タバコを落とした先が悪くて、火傷もさせるし……」  火傷というのは、人間に落としたということか。井上も誰かと会っていたのか。 「まあ、曇り空から、印貢の所に光が射しこんでいてね、天使が降りてきたなんて話題にもなるし。印貢が、また、見た事もないような安心した表情で眠っているから、ご婦人や老人の涙を誘っていたよ」 「……すいませんでした」  謝る他はない。 「俺に謝るのはいいから、季子さんを泣かさないようにね」  そこで、やっと俺はケーキを取ってあるということを思い出した。 「薫ちゃん。四区のおいしいケーキ屋ってどこですか?季子さんに謝らないと」 「薫ちゃんではない、先生と呼べ!」  怒りながらも井上が、おいしいケーキ屋を紹介してくれた。 「……ここから遠いですね」  徒歩なので、結構時間がかかる。 「しょうがないな、家まで送ってやるよ」  井上が車でケーキ屋まで行き、家までも送ってくれるという。 「ありがとうございます!」  しかし、ケーキ屋に行くと、既に売り切れになっていた。 「……次、行くか……」  数店巡ってみたが、どれも人気の品は売り切れになっていた。 「隠れ名店もあったな」  井上もムキになり、かなり離れた場所まで来てしまった。 「よし!」  ケーキではないが、手作りシュークリームを買いこんだ。 「食べてゆくか」  シュークリームを食べるのかと思ったら、近くのラーメン店に入っていた。 「生徒に奢るというのも、ダメなんだけどね」  でも、井上がラーメンを奢ってくれた。 「印貢、佳親さんに遠慮のし過ぎではないの?」  ここのラーメンも美味しい。豚骨味ではあるが、かなりあっさりしていた。
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