学園刑事物語 電光石火 幕間

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「……兄弟でも半年前まで、存在も知らなかったのですよ。俺の父親が誰かもわからないのに、兄に面倒ばかりかけていますよ」  ラーメンのスープまで完食すると、井上が追加で餃子も頼んでくれた。それに、ご飯もおまけについていた。 「温かいご飯!」  一人でいると、ご飯が面倒でついパンにしてしまう。ほかほかのご飯というのは、それだけで美味しい。  ついのんびりしてしまい、家に戻ると夕方になってしまっていた。漢方薬局は、閉店が早いので、もう、店じまいしている。 「薫ちゃん、ありがとうございます」  井上は、手を振って帰って行った。  俺は部屋に戻る前に、母屋に寄ってみた。チャイムを押すと、季子が玄関に出てきたので、シュークリームを渡す。 「ご心配をおかけしまして、すいませんでした」  希子が、渡されたシュークリームを確認していた。 「ずいぶん遠くまで買いにいったのね……」  店名で、位置まで分かるものなのか。 「夕食は……」 「食べてきました!大丈夫です!」  明日の食パンを、買っておくのを忘れてしまった。鞄を置き、洗濯機をまわしたら買いに行っておこう。 「明日もバスケ?」 「はい!三十日まで練習に行きます。大晦日に掃除をしまして、夕刻から母の恋人だった人の所に行く予定です。三日に戻ります」  希子が、暫し固まっていた。母親の恋人というのは、まずかったであろうか。母の恋人だったレイビン・ホーという青年は、日本に貧乏留学生で来ていた。しかし、実家は大富豪で、今はホー自身も実業家をしている。そして、ホーで今も俺をサポートしてくれている。  そのホーから、船でパーティーをするので来いと誘われていた。 「お正月はお店が忙しいから何もできないけど、お節を用意したのよ。でも、ウチの両親も店の手伝いに来るから居心地悪いかなあ……」  希子の妹も手伝いに来ると聞いたので、俺の部屋を開けた方がいいだろう。休憩室があったほうがいい。 「三日には戻ります。いない間は、部屋は休憩室にしてください。俺の私物は押し入れに入れておきますので、そこだけは使用しないで欲しいです」  季子が寂しそうな顔をしていると、奥から佳親がやってきた。 「弘武。季子は弘武の分の食事を用意しているよ。毎日ね……こっちで食事しようや」  俺は首を振る。
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