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「よし!遠慮しなくてもいいように、そうだね、夕食後は荷物運びをして貰おうかな。正月の商品が届いているからね」
ケーキを食べだすと、競争するように佳親が食べる。佳親は、見た目と異なり、子供のような面も多い。それを、季子がフォローしていた。
「スキーには藤原親子も来るからさ」
藤原親子が来るということは、藤原チームも来るということであった。
「征響達も来るけどね」
征響達ということは、秋里や倉吉も来る。
「あ、俺スノボーの道具一式、処分していました」
身軽にするために、必要最小限の物しか持っていない。
「本当!買っておくよ。季子、いいかな?」
「はい!買いに行きましょう」
どうして、そこで喜ぶのだろうか。
「子供の面倒で苦労する!親だよね!」
親子ごっこのようだ。
ケーキの後にプレゼントの包みを開くと、ジャージとバスケットシューズが入っていた。
「……これ」
よくサイズが分かったものだと思っていると、ジャージは大きい。季子の顔を見ると、にこにことしている。
もしかして、俺の成長を期待しているのだろうか。シューズの方は、サイズが合っていた。大きい靴など履いていられないので、そこは現在のサイズなのであろうか。
「ありがとうございます」
しかし、派手な色であった。メタリックに赤い。
「雪に埋もれても分かるように。赤にしてみた。墓の映像はショックだったよ」
もしかして、映像の後に買いに行ったのであろうか。そっと部屋を見回すと、隠れて別の小さな包みがあった。
「俺、弘武の寝顔なんて見た事ないのに、全国に先に流れるなんてな。あれは、可愛い!見せたくなかった!」
ショックはそこであるのか。俺が、部屋の隅にあった箱を開いてみると、そこには携帯電話が入っていた。俺は、そっと箱の蓋を閉めると元通りにする。
「見たな……それは、今回もそうだけど、弘武が消えるようでね。せめて、連絡を取りたいけどさ」
俺は、携帯電話は持たない。どうも、猫に鈴つけようとしている感じがする。
「……そんな顔をされると辛いからね。無理強いはしないよ」
佳親が、静かに箱を戸棚に入れた。
第三章 足跡
希子の料理がおいしいと褒めると、季子は毎日食べて欲しいと言ってきた。
「皆で食事をするのが、私の夢なの。にぎやかな食卓ね」
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