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学園刑事物語 電光石火 幕間
第一章 聖夜
バスケ練習後の帰宅途中、少し買い物をした。
買い物を終え店を出ると、あちこちからクリスマスソングが聞こえてきた。
この季節は嫌いだ。
俺、印貢 弘武(おしずみ ひろむ)は、母子家庭で育ち、そのたった一人の肉親と思っていた母親に死なれて、初めて会った兄という人物に引取られ半年が経過した。
この土地に来た時は初夏が近かったが、今は冬になる。
天神の森に一人で入ると、そのまま上を目指す。天神の森に道はないが、迷子にはならない。半年使用したせいか、何となく道のようなものもできてきた。
振り返って中学校を見ると、冬のせいか寒々しく見えた。明日は、バスケ部も休みになる。でも、一人で練習に来ようかと思っていた。
練習熱心なのではなく、家に居場所がないだけだ。
山道を抜けると、神社が見えてくる。神社の境内を突っ切ると、長い石畳の参道があった。寺社なので、クリスマスは関係ないだろうと思ったが、通りにはやはりクリスマスソングが流れていた。
部屋の階段は、倉庫のせいか外にあり、走って登るとドアを開けた。一人暮らしの状態であるので、部屋は酷く寒い。しかし、家賃以外は自活すると決めているので、暖房機は置いていなかった。
バッグから洗濯物を取り出すと、ベランダの洗濯機で洗っておく。その間に、今日、購入してきた米をといでおいた。
電気光熱費を下げるために、冷蔵庫も置いていない。テレビもないので、部屋はいたく静かであった。
洗濯が終わったので、ベランダで干していると、又、クリスマスソングが聞こえてきた。
中学一年の春に親を失ってしまって、もう半年が過ぎる。兄が引き取ってくれたが、迷惑をかけるわけにもいかない。
洗濯物を干し終わると、手が真っ赤になってしまった。
寒さを凌ぐために、図書館に行ってみようか。しかし、ここ天神区は有名な寺社が連なり、民家が少ない。近くに図書館もなければ、コンビニすらない。図書館は、天神の森を下り、一キロメートル程歩いた場所にある。
部屋の鍵を締めていると、兄の嫁、季子(きこ)が部屋を見上げていた。
「弘武君、どこかに出かけるの?」
「はい。図書館に行ってきます」
明日はクリスマスイブなので、皆の邪魔をするのも悪い。俺は、季子に明日の予定を言おうとして、ふと思いついた。
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