学園刑事物語 電光石火 幕間

21/48
前へ
/48ページ
次へ
 最近、行方不明が多発していた。それが、自然科学鮫島研究所に関わった人間に多かった。 「鮫島ってのは、媚薬なんかを使って、まず信者にさせるのよ。それで、客寄せに使用する」  鮫島は、ショック死の死体を処分していた。あれは、行方不明者であったのか。 「どうも印貢は、現場を見たようですから、保護してください」  佳親が俺を睨んでいた。俺が助けを求めるように井上を見ると、井上はあっかんべーと舌を出した。 「おかまさんは、行方不明になっていませんか?」  井上の肩が揺れた。井上は、ポーカーフェイスをしているが、実は熱血であった。その上、井上は感情が外に出やすい。 「……おかまさんってのは、どういう風な感じだ?」  そうか、色々なタイプがあるのか。夜だったのでよく見えてはいなかったが、胸はどうしてかよく見えた。 「大きな乳で、色が白くて、下はついていました。身長百七十五くらい。やせ形ですが、足が綺麗なほうです」  とにかく大きな乳であった。 「……多分、中本だよね」  井上は、顔は憶えていないかと聞いてきたが、乳は鮮明であるのに、顔は全く覚えていなかった。 「それが、どうしたんだ?」 「死体を処理されていました。鮫島は天神の森の廃墟でミンチにして、ブタの餌にしていました」  井上が吐きそうになっていた。多分、肉を食べていたのであろう。 「天神の森で処理だと」  佳親の声のトーンが下がっていた。すると、エコーのように、後方からも同じセリフが聞こえてきた。 「天神の森は、不可侵だ。鮫島だったな、好き勝手に使っていい筈はない」  玄関から将嗣が入ってきていた。その後ろに藤原もいて、俺を睨んでいた。 「印貢、どうして俺に最初に言わない?」 「四区って、死体処理は普通ではないの?」  藤原が首を振っていた。 「それはな、四区で死に、四区で処理された場合ね。天神の森は天神なの」  藤原が俺の正面に座り込んだ。 「鮫島はね、よそ者でね。四区が無法だと思ってやって来た人間。無法ではないよ、ここには特殊なルールがある」  まず、四区であっても勝手に殺しをした場合は制裁を受ける。鮫島は、事故死は殺しではないと思っているようだが、それは誤りであった。四区では、事故死などない。 「中本は、藤原のスパイであったのよ。鮫島が中で何をやっているのか調べていた」
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加